夜永ハルの執筆 blog

作家、劇作家、ストーリーテラー。物語を書き続ける。

作品のネタ探しのお話。大切なのはテーマ?

こんにちは、夜永ハルです。

 

今日は、作品を書く上で必要なテーマのお話を私のやり方でお話しようかと思います。

 

よく、物語を書く上で必要なのは、テーマだとか、メッセージだとか、いろいろなことを言われることがあります。

 

実際、私の所にも脚本を書いてみたいという人が何人か来ることがあります。

その人たちが口々に話すのは、何から書き始めてらいいのか分からないという事です。

 

たしかに、物語を書く上で果たして何から書き始めたらいいのでしょう。

テーマを決めろといいつつ、じゃあそのテーマの決め方は?

メッセージとか言われても困る。

 

物語を書いたことのない人に取ってここがもしかしたら一番最初の壁なんだと思います。

 

私のやり方になりますが、まず何について書きたいかだと思うのです。

例えば、今現在私は香水を調合する職業のお話を書いていますが、このお話のもともとのとっかかりは、昨年ちょっと大きめの劇場で舞台をしたときに舞台セットをみて、

お花畑がたくさんのセットが見たい!

からのこの物語を考え始めました。

 

順番で言うと

お花畑がたくさんのセットが見たい!→お花がたくさん出るお話→花を使う人が出てくる。→花から連想するもの→調香師?

 

という具合です。

 

花から連想するものといえば花屋さんがあったはずなのに、なぜかそこをすっ飛ばして調香師でした。

 

でも、それでいいと思うのです。私は花から調香師を連想した。

そして、調香師に不思議な力を与えて、登場するキャラクターに影響を与える物語を現在執筆中なのです。

 

何が言いたいかというと、結局のところ一番最初は連想ゲームなんだと思います。

 

一番最初はとにかくとっかかりを得ること、インスピレーションとでも言いましょうか。何でもいいのです。こういうセリフを言わせたい。このアイテムを使いたい。とか、単語でも構いません。空とか、海とか、青、とか

 

そこから、どんどん連想していくことで、物語の本が出来上がっていくのだと思います。

 

先日、同じように脚本を書いてみたいという子に相談を受けました。

先ほど話した話と同様の話をし、その子が出したものは、青色で書きたいとのことでした。

 

丁度私も、別案で練っていた物語で、青色をテーマに書きたいと考えていたので、その話をしました。

私が考えていたのは、青色といえば、中世の時代では大変貴重な色だったそうです。有名な画家であるフェルメールがよく使用していたことで、フェルメールブルーとしても有名ですね。

 

当時の青色は、ラピスラズリを砕いた顔料でした。

現代でも売られていますが、1万円は平気でする色です。

 

当時の貨幣価値を考えてみても相当の金額だったでしょう。

 

フェルメールは資産家からの支援があったことでその色を多用することが出来たそうです。

 

そこから私が連想したのは、青色とは元来他の色と比べて特別な物なんだという事。

大変貴重で、効果で、珍しい色なんだと。

 色と言えば、絵ですね。フェルメールについてもお話した通り、絵具として今やポピュラーな色です。

 

私は、それを受けて絵描きの話を書こうかと考えました。

 

主人公は絵を描くことに悩んでいる。そして絵描きとして天才と称されるヒロインと出会う。一番落ち込んでいるときに、ヒロインに青色の話をされ、青色は特別な色なんだよ。その青色を誰よりも扱えるあなたは特別な人なんだよ。

 

的なセリフを言わせたいなぁ。

 

一番最初に考えたのはこれぐらいでした。

 

でも、これぐらいでいいのです。ここまで考えれば、他のキャラクターを主人公や、ヒロインと関係がある人間で決めることが出来、絵を描く場所やイベントであればコンクールや、美大、絵画教室、等々様々なことを決めることが出来ます。

 

結局一番最初に決めた「青」がテーマになるのでしょうね。

 

ちゃんとした文言なども必要ないのです。物語がある程度書きあがってきたら考えればいいと私は思います。

 

そしてメッセージ。

小学生の頃、国語のテストでこの時の作者の気持ちを答えろという問題があったと思います。

子供の頃にはそんなの分かるわけがないと思っていました。

そして、現在でも分かるわけがないと思っています。

 

自分で書いていて思うのですが、物語に込めたメッセージがあるのであって、この時どんな気持ちだったの?とか聞かれても、ご飯食べたいとか眠いとかぐらいです。

 

あれは、問題の出し方が悪いですよね。

 

そしてメッセージとは、物語全体を通してみている人、読者や観客に伝えたい事。

友達とはすばらしいものだとか、死とは恐ろしいものだとか、様々だと思います。

 

物語の構成で起承転結があります。

 

起で物語が始まり

承で物語が動き出し

転で物語が今までとは一線を画す方向へ進み

結で物語をまとめる。

 

メッセージというのは、この中の転で、そしてさらにほんの一部分あればよいと私は思っています。

 

舞台脚本では約1時間から長いものでは3時間を超えたり、

小説で言えば、500ページ以上の物語があったり、

 

その中ですべての場面で作者のメッセージを込めてしまったらとても説教くさい物語になってしまいます。

そんなもの読ませられても、読者は感情移入することは出来ないでしょうね。

 

このように、そのほかのシーンはそのメッセージを伝えるシーンにより説得力を与えるためのシーンでしかないのです。

 

だから、その一部分のみを切り取られて、どうだと言われても全部読まないと分からないのです。

 

では、そのメッセージとはどのようにして考えればいいのでしょう。

これも結局のところインスピレーションなんだと思います。

 

私の書き方で言えば、確かに一番最初に決めているときもあります。

このメッセージをテーマに物語を書こうと決めている場合。これは本当にその時にパッと思いついたものです。どうやって決めたかと言われても困ります。

 

決められない場合、私は、登場キャラクターを決めた段階で思いつく場合があります。

登場キャラクターで、家族単位で登場するキャラクターが多い場合、必然的に家族関係のメッセージになったりします。

 

友人関係が多い場合、友人に関するメッセージになったりもします。

これも結局のところ連想ゲームなのだと思います。

 

それでも思い浮かばない場合、決めずに書き始めればいいのです。

そして、物語を書いている中で必然的に生まれてきます。

 

全て書き終わった後に読み返すと、ああ、この物語はこういうことが言いたかったんだなと再認識します。

 

そこで認識することが出来たなら、改めてそのメッセージを軸に物語を書き直せばよいのです。

 

この作業は中々に根気のいる作業です。

基本的に初稿で原稿が完成することはありません。

 

一度書いた何万という文字数の作品をまたごちゃごちゃと弄り回す。

もしかしたら、ワンシーンすべてをカットする場合もありますし、前半部分を大幅に変えたことで結果的に後半部分もほとんど書き直し、全修整ということもよくあります。

 

ここで負けずに最後まで書きあげられれば、あなたの物語は完成するのです。

 

私は、家に引きこもってこの作業をしていますが、やっていてやはり心に来ます。

上手く書きあがらず現実逃避をして、だらだらと原稿を先延ばしにしてしまうことも珍しくありません。

 

締め切り通り、計画性を持って創作できる人を私は本当に尊敬します。

私も締め切りは守るんですが。

 

 

 

Cafe fiction sttera ragazza 第4章 2

厨房、沙耶と千歳。われたお皿を片付けている千歳。沙耶が顔をのぞかせる

 

沙耶                           千歳ちゃん? 大丈夫ですか?

千歳                           沙耶さん? すいません! 大丈夫です! 今片付けてるので!

沙耶                           あ、割れもの素手で触ったら!

千歳                           いたっ!

 

皿の破片で指を切ってしまう

 

沙耶                           ああ! ほら、やっぱり! ええと、ばんそうこう! あれ? 先に消毒でしたっけ? て、てんちょ

千歳                           待って!

 

沙耶の口をふさごうとする

 

沙耶                           うぐっ! ふぃふぉふぇふぁん!?

千歳                           あ、え……。すみません……。

沙耶                           どーどー、一体どうしたんですか? とても動揺しているみたいですけど……。

千歳                           いえ、別になんでもないんです。本当に、なんでもなくて……。

沙耶                           ちょっと、休憩しましょうか。

千歳                           え、でも

沙耶                           大丈夫大丈夫。小休憩って奴ですよ。ちょっと座って、軽くお話して、気分をリフレッシュする! 休憩時間以外でも、気を抜く瞬間を作ったっていいんですよ。

千歳                           ……。分かりました。

 

二人は椅子を用意して、座り話し始める。

 

沙耶                           手、見せてください。丁度絆創膏持ってたので、お姉ちゃんが付けてあげます。

千歳                           はい。

 

沙耶がポケットから取り出した、絆創膏を、千歳の指の傷に巻いてあげる。

 

沙耶                           何かあったんですか?

千歳                           ……。

沙耶                           この1週間。千歳ちゃんは本当に頑張ってましたよ。仕事でミスもないし、一度言われたことは、すぐ覚えて。すごいなって思ってました。

千歳                           そんな、すごくなんて……。

沙耶                           だけど、なんだかずっと、無理をしている様にも見えました。鬼気迫ると言うか、笑顔の裏ではずっと、泣きそうなくらい気を張ってるみたいな。

千歳                           ……。

沙耶                           千歳ちゃんがよかったら、お姉ちゃんに話してもらえますか? 大丈夫。店長にも誰にも言いませんよ。

千歳                           ……。はい。分かりました……。

沙耶                           うん。

千歳                           私は、今回、母が旅行で私を連れていけないから、ここに預けられたと言いました。

沙耶                           うん。

千歳                           これは、別に初めての事じゃないんです。と言うかもう、小さいころから何度も良くありました。その度に私は、何人もの母の友達と言う方の所へ預けられていました。

沙耶                           そんなに沢山?

千歳                           はい。母の旅行と言うのは、母の、愛人との旅行なんです。

沙耶                           愛人!?

千歳                           大きな声を出さないでください!

沙耶                           あ、すみません……。

千歳                           母は、これは仕事なんだって言ってました。旅行に行って、いくらかお金を稼いでくるらしくて。その度に私は、預けられていました。何度も預けられるうち、だんだん、その、母の友達から、うとまれるようになっていったんです。それは          そうですよね。よその家の子供を何度も預かって、食費だってかかるし、面倒です。

沙耶                           そんなことは……。

千歳                           余程のお人よしじゃなければ、面倒な事だと思いますよ。いつか追い出されるんじゃないかって、不安になりながら日々を過ごしてました。そして私は、自分の居場所を守るために、家に置いてもらっているお礼と言う事で、その人の役に立つことをしようとしました。

沙耶                           役に立つ事?

千歳                           基本的には、家の事ですよ。ご飯を作ったり、掃除をしたり、私がいれば便利だと相手に思わせようとしたんです。実際それはある程度うまく行ったと思います。だけど、それでも、だんだん預けられる事を断られるようになったみたいです。

沙耶                           それでついに白羽の矢が立ったのが

千歳                           はい、伯父さんです。

沙耶                           それで、初めて会った時、あんなことを言っていたんですね。家事も炊事でも、なんでもやりますって。あの時は、私も店長も面喰っちゃいました。

千歳                           すいません。

沙耶                           千歳ちゃんが謝る事じゃないですよ。それで、今回も居場所を守るために、お仕事を頑張って来たと、そういう事なんですね。

千歳                           はい。でも、ミスをしてしまいました。お皿を割ってしまったし、マスターから逃げるようなことをしてしまいました。

沙耶                           大丈夫ですよ! 店長はそんなことで怒る様な人では、

千歳                           今回怒らなくても、これがきっかけになってしまうかもしれない。何が原因になるか分からないんです。だから、私にミスは許されないんです。

沙耶                           ……。大丈夫ですよ。店長なら、大丈夫。

千歳                           大丈夫じゃないんです! 今までだって、1個の小さなミスで

沙耶                           店長は、千歳ちゃんが今まで会ってきた人とは違う人です。真面目に、一生懸命働く千歳ちゃんを、店長はちゃんと見ています。そんな些細なミス、笑って許してくれる。むしろ、怪我をしていないか心配していると思いますよ。それは千歳ちゃんも、この1週間で分かってるはずです。

千歳                           それは……。

沙耶                           私も、昔、いろんな事が嫌になって、もう死んじゃおうかなって思っている時期がありました。

千歳                           沙耶さんが?

沙耶                           はい。私は、基本的に人生舐めて生きていきたいと思っています。でも、その時やっていた仕事は、とてもじゃないけど、そんな考えでやっていくのは難しい仕事だったんです。

千歳                           どんな、仕事だったんですか?

沙耶                           それは、内緒です。毎日が辛くて、でも仕事を辞めることが出来なくて、死んだら楽になるかなー。あ、死ぬ前にコーヒーでも飲もうと思って、ふらっと入ったのがこのお店でした。

千歳                           死ぬですか……。

沙耶                           そうすることが一番簡単に助かると思っていたんですよね。今思うと本当にバカです。そしてこの店で店長と出会った。お話しているうちに、なんだか、いろいろどうでもよくなっちゃたんですよね~。気が付いたら、仕事を辞めていて、このお店に入り浸るようになっていました。

千歳                           何があったんですか?

沙耶                           何も、本当にただお話しただけですよ。でも、私にとっては人生を変える程の時間でした。

千歳                           人生をですか?

沙耶                           はい! だから、千歳ちゃんもきっと大丈夫ですよ。お姉ちゃんが保障します!

千歳                           ……。

沙耶                           さ、お皿を割った事、店長に謝りに行きましょう。ミスをしたら謝るのも、お仕事ですよ。

千歳                           沙耶さん。この間遅刻したことごまかそうとしてたじゃないですか。

沙耶                           そ、それは、あれですよ! その、ほら! 朝ってとても短いじゃないですか! 気が付いたら、時間が過ぎたりしてて! お布団気持ちよくて……!

千歳                           ありがとうございます。お姉ちゃん。謝りに行きますので、一緒に来てください。

沙耶                           はい!

割れた皿を悟の所へ持っていき、謝る千歳。

 

千歳       マスター、すみませんでした。

 

悟は笑って許した。千歳は指の事を黙っていた。その日の夜、部屋で一人で過ごしている千歳。

 

千歳                           沙耶さんの言った通り、伯父さんは笑って許してくれた。沙耶さんも優しい。お店に来る人もみんないい人だ。美穂さんも、望さんも遥香さんも。今まで会ったことない人ばかり。なんだか、今まで気を張って頑張ってたのが、バカみたいだな。

 

ノックの音

 

千歳                           はい。

悟                               千歳ちゃん? ちょっと話したいんだけど、入ってもいいかな?

千歳                           はい、大丈夫です。

 

部屋の中へ入る悟

 

悟                               寝るところだった?

千歳                           いえ、まだ。ぼーっとしてただけだったので……。

悟                               そっか。

千歳                           ……。

悟                               ……。

千歳                           あの、伯父さん?

悟                               あ、えっと、昼間の事なんだけど、お皿割った事とか、本当全然気にしなくていいからね? それより、手を見せて。

千歳                           え、あ、あの!

悟                               やっぱり、指怪我してる。なんで言わなかったの?

千歳                           えっと、余計な心配をさせたくなくて……。沙耶さんが手当てしてくれましたし……。

悟                               沙耶ちゃんもグルか。これはお仕置きかな。

千歳                           あの! 私が、伯父さんに言いたくないって言ったんです。沙耶さんはそれを汲んでくれて、だから、悪いのは私だけなんです!

悟                               千歳ちゃん、お店で発生した事故やトラブルは、オーナーである僕の責任なんだ。してしまった物は仕方がないかもしれないけど、それを放置することはできないんだよ。もし、痛むようなら明日は休みでもいいよ。病院で診てもらった方がいいかも。お金の事は心配しなくてもいいし、ついでに休んで、服でも買ってきたらいいよ。いつまでも制服だけじゃ困るでしょ?

千歳                           ……。

悟                               千歳ちゃん?

千歳                           フフ。

悟                               え、なんか面白かった?

千歳                           あ、いえ、すみません。伯父さんは本当に優しい人なんですね。

悟                               え、えーと、どこでそう思ったのかな?

千歳                           ここで過ごした、時間の中でです。

悟                               おお、結構詩的な事も言うんだね。

千歳                           ? そうですか?

悟                               自覚症状ないのね。でもよかった。今までだいぶ気を張ってるように見えたから。疲れたんじゃないかと思ったけど。

千歳                           心配させてしまってすみません。確かに、そうですね。気を張っていました。

悟                               まぁ、急に知らない人間の家に預けられて、店の手伝いまでさせられて、気を張らない方がおかしいか。

千歳                           いえ、そうじゃなくって……。

悟                               そうじゃなくて?

千歳                           ……。私、ここにいるのが迷惑になっているんじゃないかと思って……。何かミスとかしたら追い出されるんじゃないかと思ってました。

悟                               そんな事するわけないじゃない!

千歳                           そうですよね。今なら分かります。伯父さんはそんなことしません。でも、その……。

悟                               どうしたの?

千歳                           ここに来て最初の日の夜、伯父さんがママと電話しているのを聞いてしまって……。私が来て、困っているって……。

悟                               あ、あー。そういう事か……。やっぱり、あの時いたんだね。

千歳                           はい……。

悟                               それは勘違いだよ。僕が姉さんに言ったのは、急に何も連絡なしに来られるのは困るって話。営業中だったし、僕がその時にいないかもしれないし。部屋の掃除とか出来てなかったかもしれないし。事前に連絡をくれればちゃんと準備できたんだよってクレームをね、話してただけなんだよ。伝わってるか分からないけど。

千歳                           そうなんですか?

悟                               うん、千歳ちゃんがいる事なんてなんにも迷惑になってないよ。むしろ大歓迎。僕はね、嬉しいんだ。今まで会う事がなかった姪とこうして過ごすことが出来てね。

千歳                           そんな、だって、私まだお仕事もちゃんと覚えてないですし……。

悟                               そんなのはゆっくり覚えていけばいいんだよ。沙耶ちゃんだってそろそろ1年ぐらい経つけど、未だに間違えるし。でもね、そんなのは関係ないんだ。僕達は家族なんだから。

千歳                           家族?

悟                               そうだよ。この期間が終わっても、いつでも遊びに来ていいし、君が望むなら、ずっといてもいいんだよ。

千歳                           ……。

悟                               君は一人で頑張らなくても、もっと誰かに甘えてもいいんだ。君はまだ子供なんだから、僕達大人が守ってあげる。

千歳                           ……。ありがとうございます。誰かにそんな風に言われたの初めてで、嬉しい。私、まだ来て1週間しか経ってませんけど、このお店の事がすっかり好きになってて……。沙耶さんも常連の方々も本当にいい人で、私、今までこんな風に接してもらったことなくて、裏で何か怖い事を考えてるんじゃないかって信じることが出来なくて……。私全然知らなかったんです。この世界にこんなに優しい場所があるってことを。

悟                               そっか。この店の名前のフィクションってね。虚構とか、創造上のものって意味があるんだけど、文学用語では、架空の出来事を創造的に描いた物語って意味を持ってるんだ。

千歳                           架空の出来事ですか?

悟                               世間は、辛いことが多い。幸福な事があっても、不幸な事の方が衝撃的すぎて、みんな幸福だった事を忘れちゃうんだ。だから、このお店に来た人には、フィクションのような、幸福になる物語を見ているような気になって、明日からも頑張って欲しいって思って名付けたんだ。

千歳                           幸福な物語。

悟                               だから、千歳ちゃんもこの店にいる間だけでも、幸福な物語を見て欲しい。

千歳                           ……。ずっと気づいていなかっただけで、この店に来てから私は、ずっと、幸福だったと思います……。本当に、ありがとうございます……。

悟                               うん。こちらこそ。明日からも、よろしくね。

千歳                           はい! よろしくお願いします!

 

第5章へ続く

おはようございます。夜永ハルです。時事ネタについて考えてること

おはようございます。夜永ハルです。

今日の散文は時事ネタについて。

 

現在私は大体7本ほど脚本を書きました。

 

しかし、初めから脚本を書く勉強をしていたわけではありません。

以前の記事でも書いたように昔ヒーローショーをしていた時に初歩の初歩の勉強を少し下程度です。

 

始めの2作品程度はなんとか自分の持っているもののみでもスラスラかけていました。

ですが、3本目あたりからでしょうか、だんだん各スピードが落ちてきたのです。

 

今考えれば当たり前の事のように思います。所詮20年そこそこしか生きておらず、人生経験もさしてない若造だったのです。自分の中にある物語では限界があります。

 そして、その自分の中にあるわずかな物語をすくいとる技術も持ち合わせていなかったのです。

そこから脚本の技術書を買いあさり読み漁り、自分の中の物語を小さじ程度でもすくいとり原稿に落とし込むことが出来るようになりました。

 

しかし、それもやはり限界がありました。

物語をすくえばすくう程、取り出すことのできるものは浅くなり、上澄みしか引き出すことが出来ず、最後まで書きあげてみればなんてことのない、物語の無い物語が出来上がっていたのです。

 

何も考えてない主人公、意味もなく起こる出来事、物語に必要のないキャラクター、都合で生み出されたキャラクター。

 

そんなものは本の段階で読んでもやはり面白くはありませんでした。

もしかしたら、俳優と演出家の手により少しばかりは面白くなったかもしれません。

 

しかし、それであるならば私が脚本家として存在する理由なんてあるのでしょうか。

誰でもいいはず。物語の体さえ保っていれば。

物語が起こり、終わる。それさえできれば誰でもいいはずなのです。

 

その状態でパソコンに向かい合っても、何も生み出すこともできず、ワードの画面を開くことさえ恐ろしくなります。

 

私は、youtubeを見ることが好きなのですが、当時はゲーム実況しか見ていませんでした。楽しそうにゲームをしている姿を見て私も一緒に楽しんでいた物です。子気味のいい会話を聞き、ゲームの展開と実況者のプレイにハラハラしてみていました。

ある日、原稿が進まない現実から逃避してyoutubeを見ていた時、たまたま考察系youtuberの動画を見つけたのです。

その時に見たものは何だったかもう思い出せませんが、そのyoutuberは都市伝説から時事ネタ、過去に起こった悲惨な事件など数多くのコンテンツを取り扱っていました。

一家惨殺の事件だったでしょうか、犯人がすでに捕まっているものです。

 なぜ犯人がそんな行動を起こしたのか、事件の背景、人間関係、いろいろな物を買施設していました。

 

それをみて私は、ああ、なるほどな。と思いました。

 

実際に起こる出来事は私が原稿に落とし込んでいる物語とは比べ物にならないくらい様々なことが理由で起こっているんです。

それぞれの人間に理由があり、それぞれの人間に物語がある。

彼の視点で見れば彼はやはり主人公なのでしょう。

 

本を書いていると、どうしてもこのキャラクターにはこのセリフを言わせたいということが往々にして起こります。

しかし、キャラクターの視点で考えてみるとそんなことを言うはずもないセリフだったりするのです。

 

つまり何が言いたいのかというと、時事ネタを掘り下げていけば掘り下げていくほど、脚本の参考になるのです。

 

昨今世間をにぎわせている統一教会にしても同じことです。

統一教会の成り立ちから、それを信仰する信者たち。

掘り下げていけば掘り下げていくほど、そこには人間的問題や、感情が存在するのです。

先日amebaTVの討論番組で、2世信者の方々が番組に出演しなぜ信者でいるのか、現状をどう思っているのかなどを語っていました。

この問題に対してまだそれほど掘り下げてはいませんが、印象としてやはり同調圧力だったり、現実に辛い目に合い信者でいたり等様々な理由があるようです。

 

そういう物事こそ、物語の参考になりえます。

時事ネタに関わる人間に焦点を当てて掘り下げ、似たような境遇と思考のキャラクターを生み出し、物語に登場させる。

そうするとどうでしょう。上澄みのみで作られたキャラクターよりも圧倒的に人間らしいキャラクターとして物語を生きてくれます。

 

結局、物語に人間を登場させる以上、そしてそれを人間に見てもらう以上、可能な限り理解可能な人間を作り出す必要があるようなんです。

もちろん、そうでない場合もありますが

 

私は別に統一教会の信者でもないですし、それに対して何がいい、何が悪いというつもりはありません。

先日の安倍元首相の国葬問題にしてもそうです。

別に反対でも賛成でもありません。そこまで深く考えてはいません。

 

しかし、物事の中で人間というのは面白いもので行動を起こすには何かしら理由があるようです。それは、単なる正義感かもしれませんし、お金の問題かもしれません。すべての人間は何の理由もなく行動することは内容です。

 

眠たいから寝る。お腹が空いたからご飯を食べる。

 

それをどんどん複雑化した理由を作り、行動していくのが人間なのかもしれませんね。